「ゴールドボーイ」 ネタバレあり感想考察:彼の心理を考えてみる

皆さま、こんばんは。アヤノテツヒロです。今回のこのブログでは 「ゴールドボーイ」 について語ります。

監督:金子修介
キャスト:岡田将生、羽村仁成、星乃あんな 他
ストーリー:実業家の婿養子である東昇が行った完全犯罪。しかし、それを見ていた朝陽たち3人の中学生は東を脅迫し現金を奪い取ろうとするが…

「ゴールドボーイ」 感想①:見てない人はとりあえず見て

いやー!ホントにおすすめ!めっちゃ面白かった!!

殺人犯とソイツを脅迫する中学生たちなんて子どもたちの危うさにハラハラしたりして、何やってんだよ!的な話かと思ってたらなんだこれは!

とにかくネタバレなしで初見での面白さを味わって欲しいのが正直なところ。

じっくり見ていくと言いたいところが出ないでもないのだが、初見の時には物語の行方に夢中になり、明かされていく彼の姿に震え興奮した。

ここからはネタバレありになってしまうのでとにかく今この記事にフラッと来てしまった人は今すぐに記事を閉じて、映画本編を見に行ってほしい。頼むから。

というのが正直な感想である。なのでホントに見てない人はここで立ち去って欲しい。劇場で見てからブログを読んでいただけると幸いです。

「ゴールドボーイ」 感想②:彼の存在感

さて、ここからはネタバレありでの感想である。


とにかく朝陽の存在感がハンパない。最初に東昇を脅迫したところからスゴい奴だとは思っていたが、ここまでだとは思っていなかった。書いていた日記も全て伏線であり、中学生のような無邪気さで淡々と恐ろしいことをやっているのが素晴らしい。


朝陽を演じた彼もそうだが、儚げな夏月、能天気そうな浩の存在感も心地良く、それぞれに演技が良かったし、爽やかな笑顔で本性を隠しながらサイコな面を見せる岡田将生が素晴らしい。

とにかくサイコパスな奴らが最高な映画でした。

さて、ここからは本編を辿りながら"彼"の思考にフォーカスしていこうと思う。自分もこう思った。自分はこう思ったなど感想ご意見をもらいたい。ネタバレ前提で書くので本編のラストの展開をいきなり語ったりするので注意しながら読んでください。てか未見の人は閲覧禁止です。何度も言いますが。

「ゴールドボーイ」 考察①:彼の思考に近づいてみる

自殺したクラスメイトの女子のことを思う朝陽。しかし、彼は彼女のことを殺している。つまり、彼女の母親が朝陽を付け回していたのは図らずも正しかったのだ(真相は知らなかったとは思うが)。このことが後の悲劇にも繋がるわけだが

冒頭から日記を書いている朝陽。これは後々彼が被害者であることを強調する証拠として機能することになるのだが、彼のことなので初めから真実を書いていなかった、もしくはある程度の事象を記録していて、最後に警察に提出した日記は後々清書したものである可能性が高い

浩との再会。朝陽の交友関係はあまり明かされていないが他の友人の描写がないことから友人は少ないと思われる。さらに浩と血の繋がらない妹である夏月と出会う。後々、夏月と恋仲になる描写、デートシーンの数々や夏休み中の出来事ということも含め、朝陽のジュブナイルものという見方も出来る(中身はとんでもないが)

この時点では東とも出会っておらず、殺人のことは考えてはいないだろうし、浩との関係も普通の友人だと考えておきたいが、浩が恐喝しているのを見ていると何か今後事件を起こした時のスケープゴートにしようと考えいたのかも知れないと考えるのは大げさか。

夏月に関しては殺してしまったクラスメイトに変わる新たな恋の相手と認識していた可能性は高い。正直、彼にとって恋愛感情がどのようなものだったのかは謎だが。この時点から朝陽の興味は夏月にフォーカスが当たり始めており、浩は空気扱いになっていく。バスに乗ってる時の居場所のない感じ、泣けてくる。

興味を持ったことにもう一つ理由をつけるなら、夏月が義理の父親を刺したというところだろう。自分の父親を殺したいと考えている朝陽にとって、彼女は自分よりも先にそれを実行した人間というのに興味を引かれたのかもしれない。

海に訪れた3人はそこで偶然にも東昇の犯行をカメラで撮影してしまう。これはさすがに偶然と思いたいが、朝陽が撮影をしていることから崖の上にいる人間たちを視界の端に捉えてたのでビデオモードにした可能性もあるだろう。

そこから報道で東昇の犯行を知り、脅迫に向かう。元は中国の小説、それを現代の日本に置き換えようとすると舞台設定に苦労し、沖縄地方の小さな島ということになった(意訳)と監督が語っていたのもあり、監視カメラとかも無さそうなのが良い。

ここでの淡々としたやり取りにも朝陽の異常さが垣間見えるが東昇も(相手が中学生と舐めているのもあるが)淡々とした様子で朝陽たちを躱そうとしている。妄想の中では彼らをナイフで瞬殺している辺り、彼もまた殺しに躊躇いはないのだろう(片付けが面倒ではあっただろうが、ここで彼らを殺しておけば東にとって最良の結果になったに違いない)

「ゴールドボーイ」 考察②:彼が辿りついた先

東昇に対し、一人2千万円、合計6千万円を要求する朝陽だったが、この時点で彼の目的は父親とその再婚相手、つまり自分が殺したクラスメイトの母親を殺すこと、そのために東や浩、夏月を利用するということだったのだろう。

少しだけ疑問なのは父親を殺そうとしていた理由があまり明確に分からないことだ。少なくとも父親(演じるのは北村一輝)は朝日を気にかけているようだし、朝陽の母親(演じるのは黒木華)ともそこまで関係性が最悪というわけにも見えない。確かにクラスメイトの母親は自身にとって邪魔者であり、排除したい存在だろうが…。ここに関しては謎だ。父親の存在が気に食わなかったのか、子供扱いしてお金さえ渡しておけばいいように扱われているのが不満だったのか、自分という存在を置き去りにして別の人間と幸せな家庭を築いているのが不満だったのか…?

話は戻るが、東に関しても朝陽がここまで近づいた理由として大きなカギとなりそうなのが、夏月と同じく親を殺していることではないだろうか。夏月は刺して傷害となったが、東は実行して成功している。そのことが朝陽にとって強い興味となったし、彼を観察し利用することで自身の目的を果たすと共に殺人に有効な知識を得ようとしていたのかも知れない。

東は義理の両親に加え、自身の妻も手にかける。この時点で大分怪しいのだが限りなく黒に近いグレーを保っているのが凄い。それを知った上でより東に近づいていく朝陽も恐ろしいが。東も朝陽の異常さに気づいている素振りはあるもののやはり軽んじているようにも見える。

朝陽と夏月の関係性もより深くなっていく。彼女が家に戻った際に父親に襲われたところを朝陽が助けたりと、夏月は朝陽のことを想っていく。それは彼の代わりに殺人を実行するほどになっていくのがどこか切ない。朝陽の中で恋愛感情というものがどういうものなのかは分からないが、夏月の父親に対しての怒りはもはや自分のモノである夏月を傷つけられることが許せなかったのかも知れない。夏月の最後のデートに関しては純粋に楽しんでいるようにも見える。日記に関してもその日についてはあまり偽装の形跡がないような気がする。

朝陽の父親と再婚相手を殺すにあたり、朝陽はどうにか自身のアリバイを作ろうとしていたのだろうが、それに関しては夏月が全てを受け入れてくれるという展開に彼自身も少しは困惑していたようにも見える。この時点で浩はかなり存在感が薄くなっているし、最初にお金を要求していたのに殺人を実行することに話が変わっていることに何も疑問を持たないことに関しては謎である。

最終的に東は3人を毒殺しようとするが、朝陽はそれを阻止、東をナイフで殺し、自身も傷つけることで殺人計画に巻き込まれてしまった悲劇の少年を演出することに成功するが、夏月からの手紙と母の機転により刑事に全てがバレてしまう。

少し気になることで言えば夏月の手紙の内容はかなり核心に迫るものであり、母親には隠せないと判断したのだろうが、ここでクラスメイトの殺害まで明かしてしまうのはかなり油断しているように見える。これは彼が中学生というまだ甘さが残っていることの現れなのだろうか、それとも東を殺害した時に覚えた「自分のしたことを語りたいという欲求」に従ってしまったのだろうか。

いずれにしても、彼の犯行が明らかになってしまったのは夏月と母親、2人の朝日を愛する女性をきっかけになるというのもまた因果だと感じた。

後半は駆け足になったが朝陽という存在にフォーカスし、彼の心理を分析しながら書いてみたがいかがだったでしょうか。正直もう一回見た上で書きたいのだが、もう上映が終わってしまいそうで手づまりである。

このブログに辿り着いた方、貴方の意見も聞きたいのでよろしくお願いします。