三幕構成をはじめとした基礎的なことから面白さを見つける方法と、作品をどう捉えたらいいのか、どう伝えればいいのかというプレッシャーを軽減できるかもしれない方法(スマホ向け改訂版)

三幕構成とプレッシャー

はじめに

一年ほど前、スクリプトドクターで映画監督、脚本家でもある三宅隆太さんがやられているポッドキャスト番組「スクリプトドクターのサクゲキRADIO」「~サクゲキRADIO2」を聞きはじめました。その影響で、かつて面白くないと思った作品を見直してみたんですね。

で、番組でも触れられていた作品を、三宅監督が語っていた様な観点から見直してみると、ぼんやりと詰まらないと感じていたものをハッキリ認識できるようになり、むしろ今では面白いと思うようになりました。三幕構成鑑賞者から求められているものと作り手が目指しているもの構成構造。主にこの4つの視座を得ることで楽しみが広がりました。

現時点での自分なりの解釈なので、監督の話とは間違って記載してしまっている所もあるかもしれません。もっと調べていこうと思いますが、ひとまずここに書いておきます。影響受けて名前を出しまくっておきながら、間違ってたらすみません、、、。

プレッシャーを下ろすかもしれないもの

▽三幕構成

物語を作り、構成するための基本理論。ハリウッド映画で使用されていることで有名。一幕目、二幕目、三幕目に分けられる。起承転結や序破急と同じような、物語の原則。”起”=一幕目、”承・転”=二幕目、”結”=三幕目といった感じです。上映時間を三分割して区切りを意識して見るだけでも、物語の輪郭を掴みやすくなります。

▽鑑賞者から求められているものと作り手が目指しているもの

文字通りという感じで、その”鑑賞者と作り手の認識の違い”を意識すると、好き嫌いは別としても、その作品がやろうとしている事を理解出来る筈です。”作り手が目指しているもの”は三宅監督の言うところの”企画の眼差し”みたいなところです。


構成構造については最後に記載していますが、三宅監督のポッドキャスト♯11のエピソード(リンク先の再生位置から)で詳しく解説されているので、そちらを聞いて頂ければ、しっかり頭に入ると思います。私の説明より丁寧でわかりやすく、詳細です。

構造っていうのは企画の眼差しです、簡単に言うと。企画の眼差しの部分が構造を呼び込むので、その呼び込まれた構造がさらに構成を呼び込む。その呼び込まれた構成が登場人物のセリフを呼び込むっていう風に、映画は玉突きを起こしていくんですよ、必ずね。映画っていうかシナリオというものは。

スクリプトドクターのサクゲキRADIO-♯11より

これらを意識して見返した映画の感想を、書いていきます。


「スーサイド・スクワッド」(2016)

まず「スーサイド・スクワッド」(2016)。通称エアー版で、実写版の一作目。これは過去に何度も詰まらないと、友人知人に話してきた作品でした。これがまた不思議な作品で、見る度に面白さがわかってくる、何回見ても楽しめるもので、段々評価が上がっていきました。

2016年の、デビッド・エアー監督による洋画「スーサイド・スクワッド」のメインビジュアルっぽい画像。

大抵の映画は三幕構成で作られていますが、今作もハッキリと章が分かれています。基地にメンバーが招集されるまでが恐らく、紹介と発端の一幕目。任務完了と思ったら息詰まり、いわゆる”焚火を囲む”(※1)をやった後に団結する、89分目までが二幕目。再び救出任務に出向くところからが三幕目。こうして三幕を意識して見ると、回想が多い話運びでも大分飲み込みやすくなりました。

とはいえ二幕目は、ジョーカーのおかげで見せ場が増えてもテンポが悪く軸もブレるんですが。

良くない評判も沢山聞く作品ですが、作劇的に破綻や矛盾も無いと思います。ハーレイは勿論、アイデアが光る”エンチャントレス変身シーン”等、SFやアメコミ映画においてルックが良いという事は、それだけでも合格点は超えていると思うので、半分は成功していると言えるかもしれません。そこからどれだけ点数を伸ばせるかというのはありますが、楽しめる部分は十~~~分にあると思います。


「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」

続いて「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」。監督の最近の講演でも題材として挙げられていたらしいです。

これは鑑賞者から求められているものと作り手が目指すものが違う、違うというかズレ、乖離が大きかった、という事ですよね恐らく。ウィル・スミスが出演していなかった事とか、『地球にようこそ!』的なツボを刺激するものが無かったのかもしれません。しかしこの作品も三幕構成はとてもきっちりしているので、上映時間を見て、場面転換を意識するとすんなりと頭に入ってくると思います。舞台演劇みたいですね。

同じことをするのではなく、前作から地続きの世界で起こり得ることを、作り手が理論立てて積み重ねていることを踏まえて見ていけば、物語の進行についてはとても誠実に作っていると感じられる筈です。何を求められていて、どう応えようとしているのかをイメージして見ることが出来れば、突飛な演出や予想外の展開にも冷静に対応できると思います。

だからと言って面白くなるかと言われれば別の話だし、人それぞれだとは思いますが、正しく批判するなら必要な視座だとは思います。中盤までの都合の良い展開も、上映時間や製作の事情を鑑みて、そこから納得できるかどうか、ということかもしれない。大雑把な解決法を(力技を)受け入れられるかどうか。

構成がしっかりしているし、ジャンルものという強い構造を持った分野でもしっかり語っている。

『あなた以外、大統領継承権を持つ者が死にました。あなたが大統領です』と言われて、いきなり宣誓しなきゃいけないシーンとか大好物なので、そこは楽しめました。本に手を置いて、もう片方の手を挙げて復唱するという例のアレですよね(笑)。ビル・プルマンが戦闘機の操縦桿を握りながら『人類を代表して、、、独立記念日おめでとう』と言うのも良かった。