【「アメリカン・プレジデント」編】”大統領”に向けられた視線から読み解きたい「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」-新作に向けて”大統領映画”を鑑賞⑤

次作の「キャプテン・アメリカ」では大統領に就任したサディアス・ロス(ハリソン・フォード)が、重要なキャラクターとなることが既に告知されています。新キャップとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の”サム・キャップ”としての活躍にも期待したいし、アクションシーンを楽しむ映画ではありますが、せっかくなので、”大統領”が大きく関わる映画をこの機会にいくつか見てみることにしました。

ハリウッド映画における”大統領”について、

・大統領は何を目的に何を守ろうとしていたのか

・それに対し、主人公は何の為に何を守ろうとしていたのか

・作り手は大統領をどの角度から描き、どう切り取っていたか

といった視座から注目していきたいと思います。


それと、私はアメリカに住んだことも無ければアメリカ文化の専門家でも何でもないので、国家としての役割とか、実際の国民の考えや反応など、現実的な視点からの解説等は出来ません。ごめんなさい。感想です。

「アメリカン・プレジデント」

監督:ロブ・ライナー

主演:マイケル・ダグラス

劇場公開:1996年

配給:UIP

アメリカ大統領アンドリュー・シェファードは、環境協会スタッフとしてホワイトハウスの会議に参加したシドニーの誠実さ、押しの強さ、そして愛嬌に惹かれ、妻を失って以降初めてのデートに誘う。大統領を相手に戸惑うシドニーだったが、彼女もアンドリューの魅力に気づき、次第に惹かれ合うが、大統領である以上、密かに愛を育てる事は難しい。2人の結末は。

大統領/主人公の目的

今回見てきた"大統領もの"の中では少し毛色の違う、ラブ・ロマンス作品。恋愛ジャンルでありつつも演説シーンがピークとなっていたり、大統領への説明や確認が矢継ぎ早に繰り出されるセリフ回し等等、政界を描いた映画としての側面も確かに併せ持つ作品なので、政治劇としても楽しめます。なので恋愛一色の娯楽作と舐めてかかっていると、真面目なスタンスに面食らうかもしれません。私がそうでした(笑)

何しろ脚本があの『ソーシャル・ネットワーク』や『シカゴ7裁判』のアーロン・ソーキン。オープニング・クレジットで名前を見て、襟を正す気持ちで見ることにしました。

今見るからこそ、かもしれませんが、争点とされる問題には現実味があり緊張感が増していて、面白さが一段上がっていると思います。セリフの応酬も綺麗に流れていくので会話劇としても楽しめました。基本的にはロマコメっぽく展開していきます。二人のすれ違いのきっかけとなるのが、それぞれが推し進めたい政策が票集めに影響してくるからなのですが、当時はまだどちらも”映画ならでは”のフィクショナブルな政策だったのでしょうか。環境問題はその頃から指摘する声が大きくなっていたのかな。銃器廃絶は今でも現実味が無いぐらい難しい問題であるのは間違いなさそうですが。

作り手が切り抜きたい”大統領”

しかしそれらを演説で、言葉の力で変えていこうとするアンドリューの姿勢は力強く、映画としてガツンと見せてくれる良い演説シーンだったので、単なるロマンス映画と思わず見て頂きたいと思います。大統領的にも恋愛のゆくえ的にも、言いたいことを言ってくれたというピーク。

もちろん恋愛要素も強く、大統領という最強の"オレ様キャラ"ですので、権力によるパワーバランスが若干心配にはなりますが(笑)、夢のある馴れ初めには見ているこちらもドキッとします。陶磁器室でのシーンは月9みたいだったし、最高権力者が迫ってくるというのも含めて、なんかアダルトでした。

しかし、初めてのキスからいい感じに盛り上がるって所で邪魔が入るのがお決まり。しかもこれは"大統領"映画。邪魔の規模が違いました。イスラエルの米軍基地が攻撃されたという報告が入り、二人だけの時間はすぐに終わってしまいます。キスシーンからの爆撃なんて、雰囲気の差があり過ぎです。そのふり幅が面白かった。

クライマックスの演説シーンは溜飲が下がるだけでなく、これまで"大統領"映画を見てきたからこそ、そして最近の日本やアメリカでも新しいトップが生まれた今だからこそ、身に沁みる言葉がありました。人が求めるものは何か、その人が本当に取ろうとしているものは何か、自分達は何を聞きたいのか。今見ることが出来て良かったです。ロマンスの展開的にも、政治映画としても、そして恐らく国民としても聞きたいこと言ってくれるじゃないの、という。

技術と美術

でもこれもまた映画=作り物。それにロマンスが主軸だから、大体が上手く収まる方向に向かっていくし、政治も何だかんだ上手いこといきます。ラストシーンの拍手も、凄いスケール感で撮影されてていい感じになってますが、規模がでか過ぎて逆に心配になるし、不穏な気もします。

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