【「リンカーン 秘密の書」編】”大統領”に向けられた視線から読み解きたい「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」-新作に向けて”大統領映画”を鑑賞⑥

次作の「キャプテン・アメリカ」では大統領に就任したサディアス・ロス(ハリソン・フォード)が、重要なキャラクターとなることが既に告知されています。新キャップとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の”サム・キャップ”としての活躍にも期待したいし、アクションシーンを楽しむ映画ではありますが、せっかくなので、”大統領”が大きく関わる映画をこの機会にいくつか見てみることにしました。

ハリウッド映画における”大統領”について、

・大統領は何を目的に何を守ろうとしていたのか

・それに対し、主人公は何の為に何を守ろうとしていたのか

・作り手は大統領をどの角度から描き、どう切り取っていたか

といった視座から注目していきたいと思います。


それと、私はアメリカに住んだことも無ければアメリカ文化の専門家でも何でもないので、国家としての役割とか、実際の国民の考えや反応など、現実的な視点からの解説等は出来ません。ごめんなさい。感想です。

「リンカーン 秘密の書」

監督:ティムール・ベクマンベトフ

主演:ベンジャミン・ウォーカー

劇場公開:2012年

配給:20世紀フォックス映画

あの『高慢と偏見とゾンビ』を執筆した小説家セス・グリアム=スミスの小説を基に、ティム・バートンを制作に迎えて作られた映画。セスは脚本も担当。昼は政治家、夜はヴァンパイア・ハンターとして世の悪を成敗する、”戦う大統領”リンカーンの知られざる活躍を描いたアクション・スリラー。

大統領/主人公の目的

キャプテン・アメリカ新作に向けて”大統領映画”を見てきましたが、今までは大統領選挙前の予備選を描いたものや、大統領を黒幕としてそれを追う記者を主人公とした作品が多かったです。様々な角度から大統領を描くことで、それがどういう存在かが浮き彫りになり、そういう意味で大統領を知ることが出来て良かったのですが、大統領自身が主役の作品もちゃんと見ておかなきゃな、と思いました。とはいえキャプテン・アメリカに向けた予習なので、実在した人物を扱った作品に限るより、フィクション性の強いものでも良いかなと思うので、”リンカーンもの”でもアクション性の強い方を選びました。フィクションの中でどう描いているか、というのも大事な観点だと思うし、キャップ新作においてもそれを持って鑑賞しようと思います。

で、選んだのがこれか!という(笑)

リンカーンが実はヴァンパイア・ハンターだった!という話なので目的も何もという感じですが、奴隷解放とヴァンパイア撲滅が重なる展開は、ありがちでも見やすいと思いました。

作り手が切り抜きたい”大統領”

分かりやすいというか、リンカーンの人生における出来事の中でもベターなものに絡めてストーリーが作られているので、フィクションとはいえ”らしさ”に溢れたリンカーン像が見られると思います。その意味で鑑賞者が求める娯楽性に応えているし、充分に楽しめる映画だと思いました。

よく知られている出来事を扱うのは見やすい反面、事ある毎に時代が進んで空白の期間が多くなるけど、諦めが良いというか、清々しく時間を飛ばしてくれます。

技術と美術

小説が原作だからか展開が多いのですが、テンポを崩さずスムーズに進んでいくし、その手際の良さは職人的で、その点でも見やすくなっています。上映時間が1時間45分というのも見やすい要因と思いますが、元々その位の予定だったのか、見やすさやテンポを意識してカットした結果なのか。

CGやVFXは10年代はじめの感じで最早懐かしく、むしろ見やすいと感じました。また見やすい要因が出た。沢山のお馬さんが疾走する場面は本当に懐かしく、10年ぶりに友達と会ったみたいな感覚にもなります。スローモーション多用の時期でした。

相棒キャラを演じるのが新キャップとなるアンソニー・マッキーで、師匠役がキャプテン・アメリカ1作目やドラマ『エージェント・カーター』で、トニー・スタークの父親ハワード・スタークを演じるドミニク・クーパーなので、MCU新作の予習にぴったりと言った感じで、ちょっと嬉しかったです。アンソニー・マッキーはこっちでも二丁拳銃でした!

ティム・バートンが制作に入っているおかげなのか、美術やセット、ライティングや衣装などなど、世界観を表す為の装飾が素晴らしく、もっと評価されるべき良作と思えるような高いレベルで撮影されていると思います。時代設定、そして美術や敵がヴァンパイアというのもあってジョジョを思い出しました。

やっぱり列車アクションは良い。楽しい。

画面中央に主人公を映し、その周りに脇役がいるショットで、脇役キャラが動いたり見えなくなった後、主人公の動きと共にカメラも移動し、そのままカメラが横を向いたら画面から外れていた脇役が急に現れる。といった短めワンカットのシーンが2つほどあり、この一連の動きは見ていて楽しかったし良い演出でした。

主人公のメイン武器が斧という渋さもさることながら、そのギミックも良かった。

”合衆国大統領どの!!”っていうセリフとか、決めのカットがアメコミっぽかったり、外連味があるのも良いと思います。大きな橋の柱を蹴り倒していくボスが良い。

ちなみに吹替で見ましたが、ヒロインの声優が相武紗季というのも少し懐かしかったです。

内部リンク

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