「竜とそばかすの姫」 ネタバレあり感想:これはネットの肯定か否定か

2021年8月26日

皆さん、こんにちは。アヤノテツヒロと申します。今回このブログで取り上げるのは 「竜とそばかすの姫」 です。

「竜とそばかすの姫 概要

監督:細田守

キャスト:中村佳穂、成田凌、染谷将太、幾田りら 他

あらすじ

50億人が利用するインターネット世界「U」。幼い頃に母親を亡くしたすずは、「U」の世界でベルという分身で歌姫として人気を集めていた。ある日、「U」の世界を荒らしている「竜」に遭遇したベルは竜に興味を惹かれていく…

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「竜とそばかすの姫」 良い点:見事な「U」の世界ビジュアルと歌声

細田守監督がこれまで描いてきた「デジモンアドベンチャー:ぼくらのウォーゲーム」、「サマーウォーズ」に引き続き、インターネット世界がさらにアップデートされた「U」の世界、確かに未来のインターネット世界という感じで、非常に見ていて面白いなと感じました。

また、主人公ベルを演じる中村佳穂さんの歌声はとても素晴らしくオープニングの「U」の圧倒的で力強い歌声に魅了されましたし、終盤の「はなればなれの君へ」なども美しい歌声でとても感動的に心に響き渡りました。


「竜とそばかすの姫」 悪い点①:「U」の説明不足、説得力

ただ、今回の「U」の世界、大変魅了的かつ美しく見せてくれるのですが、いかんせん説明不足というか、どういう空間なのかがサッパリ分からないんですよね~

デバイスを接続して、耳にイヤホンを装着し、そこから視覚情報や感触も?伝わるような感じに描かれているように思ったのですが、その時現実世界ではどうなってるのか、分身である「As」は意識で動かしているのか、ログイン・ログアウトはどうなっているのか、世界中の人が利用しているのなら翻訳は自動なのか?コンサートを開いたり、バトルしたり出来るようだが何でもできるのか?など、「もう一つの世界」というだけに広がりがありすぎるゆえに、逆にどんな世界なのかが分からなくなってしまった、むしろもっと詳細に描くことも出来たのではないかと思ってしまいました。

また、主人公ベルと竜の関係性にもツッコミ処がありましたね。ベルのコンサートに半ば強引に乱入してきた竜は「U」を守るという自警団に追われていました。そこでベルと出会うわけですが、会話を交わすことも無く、一目見ただけのような感じで「あなたは誰?」となるだろうか?そこから自分自身を危険に晒してでも竜の正体に迫ろうとする彼女の原動力が見えないなと思いました。

竜に関しても助けを求めるような立ち位置にはなっていますが、ベルに心を開く過程もイマイチ分からないし、「美女と野獣」のようなビジュアルで描かれている場面は美しいのですが、お互いが歩み寄っていく過程がイマイチ見えてこないというか…観客に理解を委ねているのかもしれませんが、正直足りないなと感じました。

ちなみに小説もあるようなのでそちらを見れば分かるのかもしれません(まあ、買わないけど笑)

「竜とそばかすの姫」イメージ画像②

「竜とそばかすの姫」 悪い点②:現実世界とUの世界のフィードバック

もう一つ、個人的に気になった部分があります。それは現実のすずの世界と「U」の世界、この二つが繋がっていくようで繋がらないまま、物語が進むことです。

「U」の世界では世界的な歌姫ベルであり、現実世界では普通の女子高生すずというキャラクターなのですが、「U」の世界に固執することなく普通の生活を送っています。「U」の世界が魅力的ならばそこから離れられない人もいるのかな~ともちょっと考えましたね。

で話を戻すと、クラスメイトのヒロちゃんとの関係はともかく、しのぶくんやカミシン、ルカちゃんとの関係性など現実世界でもすずの周りに色々と起こるのですが、それが「U」でのベルが竜を探す話に何か繋がるわけでもなく、現実世界と「U」の世界が独立して進むので、この話、意味があるかな?という場面も多かったように感じました。

例えば、しのぶくんとすずが話をしていたことから付き合っているのでは?とクラスのグループライン?みたいなもので騒ぎになるくだり、結局すぐに鎮静化して何か影響はあったのでしょうか?物語として何らかのファクターになったのでしょうか?

確かに、インターネット世界が身近になったからこそ、インターネット世界が現実生活に影響を及ぼす、またはその逆が起こることは少なくなったのかもしれません。ただ、やはり影響はするはずなんですよ!同じ人物が生活を、どちらの世界で生きていたとしても!と思いましたね。

むしろ、現実世界のすずを描くなら母を亡くしてからどこかぎこちない父親との関係にフォーカスすべきで、カミシンとルカちゃんとの関係性も広がりがないし、しのぶくんもすずとの関係性の描写が薄いので、最後にイケメンな感じで出てきてもなんだコイツ?笑に思った人もいたのでは?

また、すずが参加していた合唱サークルとの関係もよく分からないまま、終盤ではすず=ベルと知っていて応援してくれる…というのもイマイチ盛り上がらないというか、分からないというか…彼女の心の傷である母親の死も含め、描写が少ない分エモーショナルな展開に持っていくには色々と足りてないなと感じました。

ここから物語のネタバレにハッキリ触れます。

竜の正体が、父親から虐待を受けている少年:恵くんであることが分かり、すずは彼を救おうとしますが、すず=ベルと知らない彼の為に、「U」の世界ですずはベルというベールを脱ぎ捨て歌を響かせます。

「サマーウォーズ」のように、世界を救うような壮大なお話にならず、一人の少年を救うために立ち上がるという構成は良いと思います。また、見ず知らずの子供の命を救うため自らの犠牲にした母親とのリンクという意味合いもあるのかもしれません。

ただ、全世界50億アカウントの前に素顔を晒すというリスクはあまりにも大きくはないでしょうか?

また、それだけで上手く恵くんに辿り着くのも出来すぎだし、そこから恵くんの場所を割り出すくだりもご都合主義な展開(カミシンなどはこのためにしか存在してないようにも見える)に加え、劇中におけるエモーショナルなシーン、すずの歌声が観客の心を震わせ、光が広がっていくシークエンス、確かにビジュアルとしては綺麗だし、感動的です。ただ、竜を救う話には全く関係はありませんよね?この光景をもたらすことにより、すずの自信が戻った的な?

そしてすずは一人で田舎町から東京へと飛び出す!いや誰か大人付いていこうよ!?相手は虐待をしている大の男だよ?女の子一人で行かせる?しかも東京に付いてもサポートしないの?など気になる部分が多すぎて…

父親も女子高生に人睨みされただけで腰を抜かして逃げてしまうという展開にも謎を覚えました。

で、何よりですよ。この映画の問題点はネット社会をむしろ半ば否定してないか?ということなんですよ。

「U」の世界で出会ったベルと竜、その正体を探ろうとする内に辿り着いた恵くんという少年の存在と彼が置かれている状況から救うため、彼女はベルという分身からすずという自分の現実世界の姿を明かす行為をするわけですが、この展開は結局の処、「リアルで無ければ人を救うことは出来ないということ」になってしまったような気がしました。

インターネットの世界で繋がった人々、それは実際にどんな人間からも分からないし、顔も性別も分かりません。それゆえに多くの人が無責任な発言で誰かを傷つける…そんなことが起きる世界です。

ただ、見ず知らずの誰かの声だからこそ、誰かに届いて救いになることもあるとワタシは思います。そしてベルという素晴らしい歌声を持つ彼女は正体を明かさずとも誰かを救う力を持っていてもおかしくありません。それにも関わらず素顔を晒すという行為に出なければ、人1人を救うことが出来ないというのは「U」の世界を否定しているように思えてしまって…少々極端な考えかもですが、そう感じました。

少なくとも「U」の世界におけるベルの姿で竜という存在に光を当てるような展開、もしくはベルの歌声に魅せられた数多くのファンが力を貸してくれるような展開は少し合っても良かったのでは?と思いました。

コロナ禍でリアルに会うことが難しいからこそ、リアルに誰かと会うことの尊さを知ったと同時にインターネットで繋がれることの新たな価値を見出してきた世界で、「結局リアルでないとダメなんだよ」という結末はあまり良くないかなと感じました。

現実問題、彼らが虐待を受けているということは現実世界側で何とかしなければならないことなのは、分かりますが、「U」というもう一つの世界を造り上げ、ネット世界の新たな可能性を提示したわりにはそこの価値を見いだせずに終わってないか?と少し思ってしまいました。


少々暴論だったかもなと思いつつ、自分の思ったことを書いてみましたがいかがでしょうか?

極端な意見だと思うので、ぜひ見た方の感想も教えてもらいたいです!

こんな意見も一つあるのだなと思って頂ければ幸いです

では、こんなとこで

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