映画「イン・ザ・ハイツ」 感想!どこで見られる?視聴方法も!(ミドリユカリ)

2024年3月17日

今回ご紹介するのは・・・ 映画「イン・ザ・ハイツ」 ! 

ブログ記事を書く練習も兼ねて始めたシリーズ。

毎月1つの課題作品を決め、関連作の感想も踏まえて課題作品を読み解いていくシリーズ記事。

監督の過去作、同ジャンルの作品等を予習として2~3作鑑賞し、最後に課題作品を鑑賞する事でなるべく多くの視点から1つの映画を”観る”練習をする企画。(企画?)


今月(8月)の課題はブロードウェイミュージカルの映画化である『イン・ザ・ハイツ』

(シネマ・フロンティア札幌にて鑑賞)



今記事に向けた予習記事はコチラ↓

「雨に唄えば」

「クレイジー・リッチ」




映画「イン・ザ・ハイツ」 について

監督:ジョン・M・チュウ

脚本:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ

原作/作詞・作曲/音楽/製作: リン・マニュエル=ミランダ

製作:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ、アンソニー・ブレグマン、マーラ・ジェイコブス、スコット・サンダース

美術:ネルソン・コーツ

振付:クリストファー・スコット

音楽監修:スティーブン・ギジッキ

音楽総指揮/音楽:アレックス・ラカモア、ビル・シャーマン

配給:ワーナー・ブラザース

ジャンル:ミュージカル

公開時期:2021年6月(米)、同年7月(日)

上映時間:143分


映画「イン・ザ・ハイツ」 視聴方法

2021年9月1日現在、劇場公開中。(一部上映していない地域もございます)

アメリカではワーナーメディアが提供するストリーミングサービス「HBO Max」にて公開と同時に1ヶ月間配信。

Amazon プライムビデオ×
Hulu×
Netflix×
U-NEXT×
TSUTAYA TV×
レンタル未定

(上記ストリーミングサービスの状況は2021年9月1日のものになります)


映画「イン・ザ・ハイツ」 登場人物

ウスナビ・デ・ラ・ヴェガ:アンソニー・ラモス

バネッサ・モラレス:メリッサ・バレラ

ニーナ・ロザリオ:レスリー・グレイス

ベニー:コーリー・ホーキンズ

アブエラ・クラウディア:オルガ・メレディス

ダニエラ:ダフネ・ルービン=ヴェガ

カルラ:ステファニー・ベアトリス

キョカ:ダーシャ・ポランコ

ケヴィン・ロザリオ:ジミー・スミッツ

ソニー・デ・ラ・ヴェガ:グレゴリー・ディアス4世

ピラグエロ:リン=マニュエル・ミランダ


映画「イン・ザ・ハイツ」あらすじ

ニューヨークにあるマンハッタンの北端に位置する街、「ワシントン・ハイツ」。移民の街で食料品店を営むウスナビ、従兄弟のソニー、母親代わりのアブエラと共に暮らしている。物価も家賃も高騰し生活は苦しくなる一方だが、友人であるタクシー会社勤務のベニー、街一番の美容室で働くダニエラやカルラ、デザイナー志望のバネッサ達と貧しくも明るい日常を過ごしていた。ある日、名門大学へ進学したはずのニーナが突然帰ってくる。そして、ウスナビ達の運命を大きく変える大停電が起こる。

(筆者要約)


(↓オリジナル・サウンドトラックのリンクはコチラ↓)


感想

感想を書こうと思う度、文章でこの映画の勢いを伝える事が出来るのか?と考えて手が止まってしまいます。そもそも文章力が無いのでただ書くだけなんですけどね。

ほぼ全編が歌唱シーンで綴られる本作。ミュージカル映画には”歌唱シーンではストーリーがあまり進まない”というデメリットを内包していますが、ミュージカルというのはむしろ”進まない”からこそ音楽を取り入れているのではという、緊密な関係とその必要性すら改めて考えさせられる、映画好きこそ見る意義のある作品だと感じました。”進まない”分、音楽をもって登場人物の心情を深堀りし、人間性をより豊かに描く事ができるというのを強みに変えているのだと、改めて知りました。それは群像劇においてとても効率的な手法であり、だからこそミュージカル映画に群像劇が多いのかもしれません。

時に直接的、時に比喩的な歌詞でキャラクターの心情が語られ、その機微や抑揚を滑らかなメロディーライン、そして計算されたコード進行を持って見る者を納得させる力強さがあります。更に今作はラップを多用する事で、ウスナビ達の多様な生活、情報量の多さを表し、作品自体のテンポも上げているのが特徴です。ウスナビが営む食料品店はコンビニのような所で、多くの住人が代わる代わる来店しては近況を話し合う活気あるお店でした。表題曲とも言える楽曲「IN THE HEIGHTS」は、そんな日々の交流を立て続けに紹介していくラップソングでもあり、何気ない暮らしの楽しみ、静かに生活を蝕んでいく貧しさ、苦しさに負けずに夢を追い続けるエネルギッシュさ、全てを包括し幸福感をもたらす楽曲となっております。有無を言わさぬその勢いと地力の強さは圧倒的です。初見なのに泣きそうになりましたし、曲が終わった瞬間に思わずガッツポーズしたくなりました。

生活を知ること、心の内側を聴くこと。その人生の一部がまさにドラマであり、その意思と行動をもって物語をまとめていくのを楽しむのがミュージカル。まさに映画的だと感じました。映画とは何かを知りたい方に、ぜひオススメしたい作品です。

見てほしい所

どこを切り取っても見所となり得る素晴らしい作品ですが、特に注目してほしい部分を紹介します。私自身が気に入った部分になるので偏りもありますが、新たな視点を増やしてほしいという当ブログの目的でもあるので、見る角度を増やす事を楽しんで頂けたらと思います。

①不器用さが愛らしい主人公・ウスナビ

いきなりニッチな視点になりますが、今作の主人公であるウスナビの真っ直ぐ故の不器用さがとても愛らしく、見守っていたくなる魅力がありました。

冒頭の「IN THE HEIGHTS」では、好意を寄せるバネッサをなかなかデートに誘えない奥手な面が伺えます。それだけでも共感できる部分があって良いのですが、話が進むにつれ段々見えてくる彼の不器用さは本物である事がわかってきます。

落ち込むバネッサを喜ばせようと、冷蔵庫の扉の窓ガラスにハートを描くウスナビ。空気を読みきれていない所や気が利いてるとは言えないアプローチを見て、ため息を吐く従兄弟のソニーと共に見ているこちらも思わず心配になります。服に付いたソースのシミを指摘されて玉砕されたウスナビですが、そんな彼の優しさを知っているバネッサは、ソニーの助けもあってデートの誘いを受け入れてくれました。

まわりの人達を動かすその”愛され”キャラっぷりは、街の交流の中心に居る理由が伺えます。

上手く嚙み合わずにバネッサを置いてけぼりにしてしまうなど、不器用さにやきもきする場面も多々あるのが現実的で親近感を味わえました。

彼女のイラストについて、「ワンダーウーマンとシンプソンズとゲルニカのようだ」って褒めてたけど、それは誉め言葉なのか!?と本気で心配になる程なので、そこに注目するのもオススメです。

②アブエラの人生と地下トンネル

ウスナビやソニーだけでなく、ワシントン・ハイツの人々にとっても母親代わりであるアブエラ。中盤、アブエラのソロ曲「Paciencia Y Fe」(パシエンシア・イ・フェ)では、幼少期にキューバからアメリカに渡ってからの彼女の半生が歌われています。故郷では得られない”稼げる仕事”を求めて渡米した母親、移民である境遇と戦いながらも生き抜いた日々、そして辿り着いた現在地からそれらを振り返った時、彼女の心に去来する思いは何なのか。まだやり遂げていない後悔のようなもの、新たな家族と故郷へ帰れる喜びなど様々な感情が、尖りのある映像・振付と共に歌われるこの一連のシーンは本作の肝であり、圧巻の出来となっております。曲名は「忍耐と信仰」という意味で、これはアブエラの口癖でした。

母、そして同じく夢を抱いてアメリカへとやって来た移民たちの血と汗を流した労働によって、今の自分がいる事を改めて振り返るアブエラ。曲の終わり、海を渡ってきた先人たちが整列し作り出した一本の道筋は象徴的でした。地下トンネルで歌われる事に意味があるのを感じます。

その先頭に立つアブエラ。彼女が選んだ道、進んでいく道がどちらになるのか、ぜひ注目してほしいシーンです。

というか、言わずもがな注目してしまう引力がありました。

そんな彼女が伝える「スエニート=小さな夢」や「些細なことで良い、尊厳を保つの」という言葉たちが胸に刺さります。

③停電による閉店がコロナ禍を連想してしまう

物語中盤、ワシントン・ハイツ全体に及ぶ大停電が発生。これにまつわるドラマは作品を見て楽しんで頂ければと思いますが、2021年の今これを見るとどうしても、コロナ禍で休業を余儀なくされた飲食店などを思い出してしまいます。今作は2019年に撮影され、当初は2020年6月公開予定であった事から、製作段階ではコロナの影響は無かったと思われます。ハプニングにより生活が一変し、人々の心持ちも大きく変わっていく様子は、図らずも今この瞬間と重なることでより深い共感と胸騒ぎが起こりました。配信やフィジカルのリリースタイミングでもまだコロナの影響は色濃く感じられると思うので、自分達のリアルを想像しながら鑑賞することをオススメします。

停電シークエンスでは花火使いの上手さも堪能できるのでそこにもご注目ください。

まとめ

前述の通り、ぐわんぐわんに感情を揺さぶる力強い楽曲群をもって登場人物の心情を深堀りし、人間性をより豊かに描いていた本作。

プールでのダンスが華やかな楽曲「96,000」の途中、歌いながらプール場の大きな扉を開いたソニーが見られますが、扉の向こうに大勢のキャストが居るという状況で喝采を上げる姿が頼もしいです。度胸がある。

そんな魅力的なキャラクターから人生観を問いかけるドラマまで、映画というジャンルそのものを楽しめる要素が十二分に詰まった作品ですので本当にオススメです!

↓↓↓過去記事はコチラ↓↓↓

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