宇多丸さん宇垣美里さん、「イン・ザ・ハイツ」を語る – アトロク冒頭書き起こし

「イン・ザ・ハイツ」を鑑賞してその感想記事を書いたのですが、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」(以下アトロク)内にて、パーソナリティのRHYMESTER・宇多丸さんと火曜日パートナーの宇垣美里さんが同作品の感想を番組内にて話しており、その内容もとても興味深いものだったのでその一部始終を(((非公式ですが)))書き起こししてみました。( アトロク書き起こし )

公式サイト→「イン・ザ・ハイツ」

作品の基本情報も記載しておりますのでご参考ください。

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予習編1→「雨に唄えば」

予習編2→「クレイジー・リッチ」

課題作品→「イン・ザ・ハイツ」



アトロク書き起こし – 8/10(火) – オープニングトーク

アトロク書き起こし

(宇多丸さんと宇垣さんが、名古屋市長の金メダル齧り事件や小田急線刺傷事件など、理不尽な事件が続いている事に言及した後の会話になります)

宇垣:もう、なんか悲しかったから映画を見ようと思って。映画館に行ったんです。「イン・ザ・ハイツ」を見て。

宇多丸:岡田育さんもオススメでございました。

宇垣:めちゃくちゃ元気がでました。

宇多丸:クレイジー・リッチの監督(ジョン・M・チュウ)のね、そしてハミルトンのチームの。これ絶対よかろうと思ってたんですけど。ライムスターマネージャー小山内さんもいち早く見て、まぁ良かった良かったって言ってて、泣きすぎて頭痛いと申しておりました。

宇垣:もう一曲一曲が全部、泣く。内容とかじゃない、まず最初に「IN THE HEIGHTS」の曲が降ってきて。

宇多丸:曲のパワーで。

宇垣:もう泣いてしまうぐらいパワフルで。ヒップホップでありラップであり。情報量の多い歌詞の中にラテンのリズム、ビートがぐんぐんと入ってきて、もう聴いてるだけでちょっと踊りだしたくなるような、肩を揺らしたくなる音楽で。その中で歌われてることって勿論凄く厳しい現実で。ここで育ってきたけども、ワシントン・ハイツで育ってきたけれども、どんどん家賃が上がってきてここにはもう住めないかも。5年後にはもしかしたら金持ちの街になっているかも、ってベースがあって。やりたい事がある、例えばみんなの期待を背負って大学に行ったけどどうも馴染めない子もいれば、お金はあるって言ってるのに、頑張ってコツコツ溜めてきたお金があるから家賃払えるって言ってるのに、どうも信用されなくて賃貸が借りれない女の子が居たりっていう。

宇多丸:うんうん。

宇垣:色んな、みんな抱えながらそれでも夢を追いかけてる人達の話で。もう音楽も良いし、何よりも、この時間は二度と来ないかもしれない、みんなバラバラになっちゃうかもしれない、この街には住めないかもしれないけど、こんな事でお前らのラテンの血は途絶えるのか!?踊れ!って言って。ここでカーニバルをしろ!これだけじゃないかもしれない、これだけで夢はもう終わってしまうかもしれないけど、救われないことばっかりだけど、踊ろう!って踊るのがもうすっごいパワフルで、勝手に感じ入ってしまって。

宇多丸:単に楽しい歌と踊りっていうんじゃなくて、そういう社会背景っていうか。そういう話なんですね。

宇垣:まだまだ私はそのコミュニティの方々の話を知らなかったから、ちゃんと今度勉強しなきゃなとは思ったんですけど。プエルトリコから来てる人とかドミニカから来てる人とか。

宇多丸:まあ言っちゃえばアメリカの縮図の話でもありますよね。つまり”アメリカなるもの”の、ね。

宇垣:そう、ドリーマーと呼ばれる方たちの話であるんですけど。もう、本当に良くて!!頼むから見てくれ聴いてくれという感じがしております!

宇多丸:なるほど!

宇垣:元気でます!

宇多丸:引き続きムービーウォッチメンのガチャにも入ると思いますし、非常に楽しみにしております!


アトロク書き起こし – 8/17 – オープニングトーク

(舞台「ジェイミー」の話題の後)

宇多丸:ちょっとそういうミュージカル並びで言いますと、岡田育さんもオススメ頂いて、宇垣さんもいち早く見てマネージャー小山内さんも見てすごく良かったって、ずっと最初から泣いてたっていう「イン・ザ・ハイツ」を見て。

宇垣:(拍手)

宇多丸:もうさ、新作公開がもの凄い大渋滞していて、ムービーウォッチメンも来週の枠とかもう大変な事になってて。「イン・ザ・ハイツ」とかもう回数減っちゃってんの。

宇垣:えぇ!?つい最近始まったばっかりなのに。

宇多丸:そうそう。人は入ってるっていうか、一個空けモードなんですけど、どこも。コロナ対策はしながら当然の事なんですが、もう、ね。回数が減ってきちゃってて。この調子で行くとこれ当たらない可能性あるなって、ムービーウォッチメンに。

宇垣:あと一回行きたいぐらいなのに。

宇多丸:あとこれ劇場でやっぱ、ちゃんとね。

宇垣:絶対その方がいい!

宇多丸:ちゃんとした音響で見たいと思って見てきました先ほど。

宇垣:ちょっとその感想、オープニング入ってから聞きます?

~番組コールとオープニング~

(中略)

宇多丸:そんな大した話じゃないんですけど。皆さん絶賛されている、元は2005年なんですかね?オリジナルはブロードウェイミュージカルで。その作られたのはリン・マニュエル=ミランダさんというね、「ハミルトン」というね、これもまた大評判のミュージカル。ラップとか凄く巧みに取り入れるというかね。そんなミュージカルでも評判になりましたが、その方の2005年の舞台を基にした映画で。

宇垣:ちょっと出てましたね。作品の中に。

宇多丸:あ、あれだ!アイス、あれの、道端の!

宇垣:そうそうそう!

宇多丸:そっかあの人か!今やっと気づいた!ちょっとした美味しい役でしたね。ちょっとしたこういう、まさに美味しいというか。

宇垣:彼が作った方なんですね。

宇多丸:そうそう。で、そういう文脈もありつつ、結構前から映画化の話が進んでたんだけど、二転三転して。で今監督になったのがジョン・M・チュウさんじゃないですか。

宇垣:「クレイジー・リッチ」

宇多丸:それと並べて。まあ本当、素晴らしかったです。僕の見方で言うと「クレイジー・リッチ」のあの監督と思って見るとまた別のというか、ようはその、エスニック・ニュー・ハリウッド・クラシックスタイルというのかな。もう完全に僕の造語だけど、「クレイジー・リッチ」も、1940年代にあったようなロマンチック・コメディ。まあそれこそシンデレラストーリーと言っていいような。まぁ言っちゃえば古典的なタイプの。

宇垣:ストーリー自体はね。

宇多丸:うん。ロマンチック・コメディだし、今回の「イン・ザ・ハイツ」も、凄く古典的ハリウッド・ミュージカルスタイルを取っている所が一杯あって。

宇垣:目くばせが凄いですよね。色んな作品に対する。

宇多丸:そうそうオマージュとかね。それもあって。クラシカルなスタイル、ハリウッドの黄金期のスタイルっていうのをやってるんだけど、それが同時にやられてるのが例えば「クレイジー・リッチ」だったら、ハリウッドで長らく軽視されてきたアジア系を、完全に最もイケてる美しいあれとして出した。でジョン・M・チュウさん自身が中国系なのかな?だからアジア系を推してるのかなと思ったら、今回はドミニカ出身だったりプエルトリコだったり、ラテン系移民、じゃないですか。だから全体にその、ハリウッドの主流の人物として扱われなかったエスニックの存在というか、移民とかが作って来た文化みたいなものをベースに、昔ながらのハリウッドのスタイルを甦らせるという文脈が、まだ2作ですけど、はっきりあって。それが凄いこう、良いな!っていうか。ようするに映画を蘇らせてるというか。今の、こうなんていうかな、良識というかさ、人種的な人権的な問題の意識に照らしてやると、こんなにも新鮮に、こんなにも新しく、しかもそれが今回だったらミュージカルだから、色んな音楽的文脈、ラップとか凄い使い方が凄く上手くて。あの主人公のね、何だっけ・・・

宇垣:ウスナビ?

宇多丸:そうウスナビ。何でこんな変な名前かっていうのも理由も笑っちゃうんだけども(笑)

宇垣:ふふふ。

宇多丸:ウスナビさんのラップがまたね、ナズ(アメリカのラッパー)ばりのフロウというか、めちゃくちゃ上手いんですよラップが。

宇垣:そうなんですね。

宇多丸:めちゃくちゃ上手いのよ彼が。

宇垣:聴いてて楽しかったんですけど、やっぱりプロから見ても、

宇多丸:超上手い!超かっこいい!でラップが入ってきたり、サルサ風味が入ってきたり、あとはレゲエ風味というかレゲトン風味っていうのかな。凄く色んな文化が入り混じる事で音楽的にも豊かになって。

宇垣:本当、踊りださずにはいられないって感じですよね。

宇多丸:しかもそれがワシントン・ハイツっていうニューヨークの中の一角で、移民で作ってきた街だけど地価の高騰で、もうしばらくすると高くて住めなくなっちゃって。

宇垣:追い出されちゃうかもしれない。

宇多丸:みたいな。ニューヨークのそういうね、地価のそれと人種の、階層の移動の話ってまさにそれがニューヨークの色んな歴史を形作ってきたもので。これはこれでまた一つ話が長く出来ちゃうぐらいなんだけど。まぁそういう歴史的背景の中で、あとはもう一つ当然、移民排斥的な動きみたいなものもあった時代で。

宇垣:ドリーマーと呼ばれる、市民権というか権利の無い子供たちの話もありましたし。

宇多丸:不法移民だからっつって何とかみたいな。でもアメリカってどうやって出来た国なんだっていう。アメリカに限らないんだよね。ひいては凄く普遍的な話っていうか。あるコミュニティに、外から来て何代目の人達が、ここが故郷だってなっていくまでの話っていうか、アイデンティティをある種再構築するまでの話っていうか。だから勿論、”ザ・アメリカ”の話でありながら、例えば日本であったりルーツっていうか。

宇垣:ちょっと違うかもしれないけど、私は上京してきた時の気持ちが。ちょっとわかるって思いました。全然規模は違うけど、きっと私は地元に戻らないし、多分ここで生きていくっていうその気持ちはわかる。けど時々凄く懐かしく思う気持ちは凄くわかるなって思いながら見てました。

宇多丸:故郷は心にあるって話でもあるし、ここにまた新たなホームを作るっていう話でもあるし。そういうものが音楽的豊かさと、社会的な背景のバックボーンと、でも凄く素晴らしいエンターテイメントのハリウッドのクラシカルなスタイルと、混然一体となって。一個一個は凄く根っこがある、古くからあるクラシカルな流れがまとまって全く新しいブラッドになるっていうか。凄いこう、映画そのものが、新たな時代を作っていくのは我々だという気概に溢れてて、元々音楽が持ってる力と相まってもの凄い。

宇垣:映像の美しさもありますし。

宇多丸:技術的にもね。例えばあの壁のところとかさ、あれどうやって撮ってんの!?って。あれも昔のハリウッドの、部屋全体をぐるぐる回して、ああいうのを、現代ならこうやるっていうオマージュ且つ現代アップデート版なんだけど。重力の位置が変わって・・・ここまではわかる。ここでカット切るならわかる・・・そのまま続くのか~~~いみたいな!とかね。そういう仕掛けの所もあるし。音楽的な起伏だけでも飽きないし。見事でしたね。

宇垣:ずっとサントラ聴いてましたね。

宇多丸:あと見ててこの話、どこに着地すれば正解なのか。ようするに現実のことをベースにしてるから、何が正解なんだろうこの話って思ってみてたら。そうだよね、そう来ましたかってとこもあって。

宇垣:ここがミスリード、おおおみたいなとかね。素晴らしい、みんなに見てほしい。

宇多丸:近年の新しいミュージカルをやっていこうって流れ、「ラ・ラ・ランド」とかある中で、結構これトップクラスの傑作じゃないかな。

宇垣:最初にミュージカル見るって人にこれ勧めるかなって思います。

宇多丸:勿論どの国の子供たちが見ても元気でるやつだし、素晴らしかったです!


映画「イン・ザ・ハイツ」 について

監督:ジョン・M・チュウ

脚本:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ

原作/作詞・作曲/音楽/製作: リン・マニュエル=ミランダ

製作:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ、アンソニー・ブレグマン、マーラ・ジェイコブス、スコット・サンダース

美術:ネルソン・コーツ

振付:クリストファー・スコット

音楽監修:スティーブン・ギジッキ

音楽総指揮/音楽:アレックス・ラカモア、ビル・シャーマン

配給:ワーナー・ブラザース

ジャンル:ミュージカル

公開時期:2021年6月(米)、同年7月(日)

上映時間:143分


映画「イン・ザ・ハイツ」 視聴方法

2021年9月1日現在、劇場公開中。(一部上映していない地域もございます)

アメリカではワーナーメディアが提供するストリーミングサービス「HBO Max」にて公開と同時に1ヶ月間配信。

Amazon プライムビデオ×
Hulu×
Netflix×
U-NEXT×
TSUTAYA TV×
レンタル未定

(上記ストリーミングサービスの状況は2021年9月1日のものになります)


映画「イン・ザ・ハイツ」 登場人物

ウスナビ・デ・ラ・ヴェガ:アンソニー・ラモス

バネッサ・モラレス:メリッサ・バレラ

ニーナ・ロザリオ:レスリー・グレイス

ベニー:コーリー・ホーキンズ

アブエラ・クラウディア:オルガ・メレディス

ダニエラ:ダフネ・ルービン=ヴェガ

カルラ:ステファニー・ベアトリス

キョカ:ダーシャ・ポランコ

ケヴィン・ロザリオ:ジミー・スミッツ

ソニー・デ・ラ・ヴェガ:グレゴリー・ディアス4世

ピラグエロ:リン=マニュエル・ミランダ


映画「イン・ザ・ハイツ」あらすじ

ニューヨークにあるマンハッタンの北端に位置する街、「ワシントン・ハイツ」。移民の街で食料品店を営むウスナビ、従兄弟のソニー、母親代わりのアブエラと共に暮らしている。物価も家賃も高騰し生活は苦しくなる一方だが、友人であるタクシー会社勤務のベニー、街一番の美容室で働くダニエラやカルラ、デザイナー志望のバネッサ達と貧しくも明るい日常を過ごしていた。ある日、名門大学へ進学したはずのニーナが突然帰ってくる。そして、ウスナビ達の運命を大きく変える大停電が起こる。

(筆者要約)


アトロク書き起こし 最後に – 宇多丸さんと日比さんのトークも

翌日の8月18日放送分のオープニングトークでも、宇多丸さんと水曜パートナーの日比麻音子アナが今作について話しているので、そちらもSpotifyやラジオクラウドなどで無料で聞けます。映画をより楽しむ参考としてオススメです。

↓↓↓過去記事はコチラ↓↓↓

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