「RUN」 ネタバレあり感想:狂気の母の恐怖と親と子という関係

2021年8月22日

皆さん、こんにちは。アヤノテツヒロと申します。今回このブログで取り上げる映画は 「RUN」 です。

「RUN」  概要

監督:アニーシュ・チャガンティ

キャスト:キーラ・アレン、サラ・ポールソン他

あらすじ

郊外に暮らすクロエとダイアンの親子。幼少期から慢性の病気で車いす生活を余儀なくされているクロエを献身的に支える母ダイアン。しかし、自身の飲んでいる薬へのふとした疑問から母親に対する不信感が…

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「RUN」 感想①:クロエを縛る数多くの制約

母ダイアンに違和感や不信感を覚えるクロエですが、彼女には数多くの縛りがありそれが真相解明への障害となります。

持病のぜんそく、発疹に加え、車いすでの生活という身体の縛りはもちろん、郊外の家(頼れる隣人などもいない)、携帯やスマホも持たせてもらえず、あるのはリビングのPCのみ(しかも恐らくWindows XP!)、車いすの為自宅学習(友人とかもいない)…むしろ今まで良くいい子に育ってきたなと言いたいぐらいの縛りっぷりです。

実際、この映画にはこの手のツッコミ処は多いです。終盤明らかになる秘密がそれをさらに加速させましたね。この状況でいかに病院やら学校やらに手続きしたのかなんなのか…色々と気になる点は多いですがそこは置いておくしかないです(笑)

このツッコミ処が気になるかどうか問題は根深いんですよね…気になっちゃうと途端に物語に入り込めなくなるし、気にしないで済む時もあるし…難しいです。

話は逸れましたが、とにかくクロエには制限が多いため、母親への不信感から色々調べようとしますが中々上手くいかないんですよね。

前作「search」ではデジタルツールを駆使した映像を見せた監督ですが、今回は全くと言っていいほどデジタルツールには頼れない状況でのサスペンスを描いています。

クロエは身に着けた知識と機転を利かせた行動、あとは上半身を駆使した気合いでどうにか母親の秘密を探ろうとします。

薬局で自分の服用している薬が犬用と知った時にショックと言ったら…ここから母の狂気が加速し始めます。

「RUN」イメージ画像

「RUN」 感想②:ダイアンが見せる狂気

薬の存在もバレたダイアンはより娘を身近に置くために行動を加速させていきます。部屋に閉じ込めたり、車いす用の機械の電源を切ったり、電話線を切ったり…クロエを外へ出さないようになっていきます。

さらに、クロエが助けを求めた郵便配達員の男性を(恐らく)殺害してしまうダイアン…この時点でまともではないですよね。

クロエは閉じ込められた地下室でさらに衝撃的な事実を知ります。それはダイアンの実の娘ではないということ、さらに自身は誘拐された上に、健康な体を不自由にさせられているということを知ります。

「あなたのためなの!」と語るダイアンですが、それは全て自分のためでしょう。攫ってきた娘の素性を隠すため、真実を知られないため、そして娘を育てることで自身の存在意義をハッキリさせるために…サラ・ポールソンが見せる迫真の狂気にガクブルでした…

クロエへの異常な愛ゆえに殺せはしないので、クロエは自らを危険に晒して病院へと搬送されます。しかし、母の狂気はとどまることを知らず…(あんな状態で運ばれてきた患者をほったらかす看護師とかもどうかと思うけどね!)クロエを拉致しようとしますが、クロエの抵抗もあり、ダイアンは警備員に撃たれ、階段から転げ落ちます。

「RUN」 考察:親と子‐近いゆえに発生する依存と呪い‐

さて、ここまではこの映画の恐怖のエンタテインメントについて書いてきましたが、この映画を身近に感じることも出来ます。

ここまで狂気には満ちていないでしょうが、身近にも「子離れ出来ない親」はいるし、「親元から独立したいと願うティーン」もいるわけですよね。

この作品の母親は「子離れ出来ない」上に、「娘という存在に依存」、「自分が娘の為に存在しており、その為には手段を選ばない」、「娘をそばに置くことで自分の存在意義を意識する」など娘の存在、というより娘を守る、手元に置くこと無くしては生きていけないというヒドイ依存状態になっているとも考えられます。

ここで注目したいのは母親のシャワーシーンで印象的に写った背中の傷です。

恐らくあれは虐待の傷なのではないかと思います。

彼女は母親から虐待を受けており、その虐待すること=痛めつけたり、拘束したりすることを愛情と思っていたという可能性もあるし、母親からの虐待=愛情不足:娘への異常なまでの執着となっているのではないかと思いました。

そして娘にもそれは受け継がれてしまったかもと思えるのがラストシーンです。

サスペンススリラーとしては母親に対する復讐が始まるというラストになっていますが、この観点から行くとひょっとしたら彼女も子供に対し偏執な接し方をしてしまうかも…と思ったりもしました。

少なくとも彼女は結婚している?(左手薬指に指輪があったと思う)ので将来的に子供が生まれる可能性はあります。その時、彼女が母親から受けた愛情表現が変に受け継がれていたら…というのは考えすぎでしょうか?

彼女は自分の人生を歪めた母親を恨んでいるわけですし、そんな母親を真似るようなことにはならないと思いますが、自分の身体に薬を隠して母親への復讐を始めようとする彼女の狂気じみた行動を見ると…

狂気の復讐者狂気の継承者にならないことを祈るばかりです。


さて、映画「RUN」についてザックリと書いてみましたがいかがでしょうか?

母親の狂気に満ちたサスペンススリラーであると同時に親と子を巡る話として身近な問題も隠されているような作品だなと個人的には感じました。

では、今回はこの辺で

最近のオススメ映画は他にも!こちらもよろしくお願いいたします。